コラム「旧戸井線跡(市道緑園通)


旧戸井線跡(市道緑園通)

 鉄道の廃線跡に感じるのがノスタルジーなら、未成線の鉄路跡にはどんな感慨を抱くでしょうか。
 函館と湯の川・釜谷・戸井(いずれも現在は函館市に合併)を結ぶはずだった旧戸井線は、開通することなく廃棄された「まぼろし」の鉄道です。線路の本格的な着工は昭和12(1937)年からで、津軽海峡に面した下海岸の要衝に建設された要塞や砲台に、軍事物資を運ぶことを主な目的とする鉄道になるはずでした。函館から湯の川までの区間では順調に工事が進み、敷かれたレールの上を工事用の列車が走る風景も見られたと言います。しかし、日中および太平洋戦争の戦局悪化を受けて工事は中断され、戦後になっても再開されることはありませんでした。
 湯川小学校の裏手に設置される予定だった「湯の川駅」付近を境にして、西側は歩行者や自転車の専用道路などに再利用され、サイクリングや散策を楽しめます。東側の旧路線跡は、海岸線を走る国道278号とほぼ並行して延び、ところどころでコンクリート製の橋脚・築堤・陸橋・トンネルなどを見ることができます。
 湯の川に残る未成線の線路跡は、およそ70年の歳月を経た遺構であり、未完成ゆえに想像をかきたてられる風景でもあります。


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